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4月, 2021の投稿を表示しています

【事例】某産業機械メーカー(前編):イノベーションへのあまりにも冷めた空気

ご相談をいただいたのは、産業機械のグローバル企業の技術部と人事部。ニッチと言っていい分野で高い市場シェアを持ち、日本法人は数百名の従業員が働いている。 この会社では、技術部発の新製品がしばらく出せていない状態だという。そこで、イノベーション創出の方法を学ぶ機会を作りたいというご相談だった。いわゆる「10%ルール」のような、勤務時間の一定割合を自由に、個々人の好きなテーマを深掘りをすることにあてる試みも以前にはなされたが、効果はほとんどなかったという。社長も技術部トップも新製品開発を奨励しているものの、現実に前に進んでいかない状態だった。技術部トップの方は、「やっていいと言われても、どうしたらいいのか分からない状態なのではないか」という仮説に基づいて学ぶ機会を作ろうと発案された。 このための企画を考える段階で色々とお話を伺った中で、私は私なりにいくつかの仮説を持つに至った。まず、技術部員の個人個人に新製品開発の能力があるかどうかとは関係なく、その発揮を阻害する組織的な要因があるのではないか、というものである。もっと具体的に言えば、この会社の事業ではプロジェクト単位で動くことがほとんどで、顧客企業から受注すると、技術部員はそこの工場に同社の製品あるいは技術を導入するために注力する。 このような産業機械業界だけでなく、IT業界(具体的にはシステムインテグレータ業界)や建設業界などもそうだが、プロジェクト単位で動く企業に非常に多いのは、「単年度黒字文化」とでも呼ぶべきものの存在である。それは、近年のプロジェクト会計が厳しくなった背景もあり、プロジェクト単位で利益を出すことを至上命題としており、そうすると基本的に1年度の中で黒字を出すことが求められる。 これは当然と言えば当然のことなのだが、イノベーション創出においては阻害要因になり得る。つまり、利益を出すまでの期間があまりにも短すぎるためにイノベーション創出のための実験期間がほとんど取れなくなるからである。この傾向、あるいは圧力はマクロ経済がデフレーションの傾向が強くなれば尚更強くなる。キャッシュの価値が上がってしまい、投資資産として保有すると、平たく言えば損になってしまうからである。さらには、コロナウィルスの問題によってデフレーション傾向は加速している(ご参考: 日本経済研究センター『コロナ下でのデフレ加速』 )。 つまり

御社ではしていませんか?【ひどい採用面接①】「いきなり志望動機の質問」

新卒採用のほとんどのプロセスがリモートになっている中、そのやりにくさを乗り越えながら採用プロセスを進めている方々、就職活動中、あるいは就活を終えた学生さんは本当に大変だと思う。頭が下がる思いである。 その上で申し上げたいのだが、もちろん、ほんの一部でしかないが、最近、就活中の学生さんの声を聴く機会があった。その中で、「これはひどい面接方法だな」と思うことが何度もあった。ここではその1つ、「志望動機に関する質問」について書きたいと思う。私は志望動機をしつこく聞きまくることにそんなに大きな意味はないと考えている。それは表現方法の巧みさは測れても、志望動機の強さは必ずしも測れない。 志望動機を面接中に質問する企業は非常に多い。それ自体を批判するつもりもない。本当にやる気の高い人、それが持続しそうな人を採用したいという意図だろう。 ただし、そういう質問をする方々は、学生さんの視点に立って考えてみたことがあるだろうか。学生さんにしてみれば、志望動機を聞かれれば、自分の長所とその企業の長所をなんとか結び付け、いかに自分を採用することに意味があるかということを(無理やりにでも)話したいだろう。 しかしながら、学生さんに、そもそもそんなに強い希望があるだろうか? もちろん、一部にはあり得るが、非常に多くのケースではこのぐらいのはずである。 「何をやりたいかといっても、特に具体的な希望があるわけではない。かといって、むやみやたらと様々な業種の企業の、様々な職種を希望するのは現実的ではない。だから一応、業種や職種を絞ってはいるが、そこに確信があるわけでもない。楽していっぱい稼げたら一番いいけど、そんなものがないのは分かっている。せめて、やりがいが見出せて、良い上司や先輩や仲間に恵まれて楽しく仕事して、給料も高望みはしないけど、安すぎない企業に就職したい。その中でたまたま情報を見て応募してみた。もちろん、内定をもらえるなら考えたい候補ではあるけど…。」 私が学生さんの声を聴き、本音を推測するところによれば、特に技術職以外では非常に多くのケースでこの程度である。 それにも関わらず、面接まで進むと、当たり前のように面接官は「うちの会社の志望する理由を教えてください。」と、なんならかなり早い段階で質問をする。あるいは、会社説明会なのにいきなりそんなことを聞かれたという声もあった。あるいは、エン