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今だから問いたい。『働き方改革』がイノベーションを促進するって、正気ですか?

もしかしたら、既に忘れ去られつつあるのかもしれないが、昔「働き方改革」というものがあった。いや、昔のことに思えるが、調べてみると、2016~18年頃に盛んに議論されていた。 ブラックな働かせ方が横行していた(している?)日本において、私もその必要性は理解できるが、全くもって非論理的な議論も含まれていた。何年かして検証すべきだと思っていたのだが、そろそろ検証してみようと思う。 日本で働き方改革が政府主導で推進され、2017年には、政府による「 働き方改革実行計画 」の中でこう謳っている。 「経済成長の隘路の根本は、人口問題という構造的な問題に加え、イノベーションの欠如による生産性向上の低迷、革新的技術への投資不足。」 ちなみに、私は知らなかったのだが、「隘路」というのは「あいろ」と読むそうで、細くなった道というような意味で、つまりボトルネック、問題点というような意味のようである。さほど一般的でない表現をすることに何か少しでも意味があるのだろうか。 そして、「日本経済の再生を実現させるためには、投資やイノベーションの促進を通じた付加価値生産性の向上と、労働参加率の向上を図ることが必要。」と。 なるほど、と。ただし、ここから先は私にはほとんど理解できないのだが、そのための方法として挙げられているのは、全く悪意なく要約すると、以下のようなもの。 「非正規」という言葉を一掃すれば、モチベーションが上がって労働生産性が上がる。 長時間労働を是正すれば労働参加率が上がり、労働生産性が上がる。 単線型の労働市場・企業慣行が柔軟になれば、付加価値の高い産業への転職・再就職が増え、全体の生産性が上がる。 1つ質問したくなるのは、「非正規、長時間労働、単線型キャリアパスをなくせばイノベーションが起こって生産性が上がるのですか?」という点であり、もしその答えが「そうだ」というなら、さらに「正気ですか?」と問いたい。 いや、それでも成果が出ていればいいのかもしれない。その場合は潔く考えを改めたい。新型コロナウィルスが蔓延した2020年よりも前、2019年度のデータを見てみると付加価値は残念ながら上がっていない。(「 経済産業省企業活動基本調査 」) 新型コロナウィルスの蔓延で経済が縮小しているので2020年以降を見ていないが、仮にこの間、リモートワークが普及したことが「働き方改革」に貢献して...

【事例】某産業機械メーカー(前編):イノベーションへのあまりにも冷めた空気

ご相談をいただいたのは、産業機械のグローバル企業の技術部と人事部。ニッチと言っていい分野で高い市場シェアを持ち、日本法人は数百名の従業員が働いている。 この会社では、技術部発の新製品がしばらく出せていない状態だという。そこで、イノベーション創出の方法を学ぶ機会を作りたいというご相談だった。いわゆる「10%ルール」のような、勤務時間の一定割合を自由に、個々人の好きなテーマを深掘りをすることにあてる試みも以前にはなされたが、効果はほとんどなかったという。社長も技術部トップも新製品開発を奨励しているものの、現実に前に進んでいかない状態だった。技術部トップの方は、「やっていいと言われても、どうしたらいいのか分からない状態なのではないか」という仮説に基づいて学ぶ機会を作ろうと発案された。 このための企画を考える段階で色々とお話を伺った中で、私は私なりにいくつかの仮説を持つに至った。まず、技術部員の個人個人に新製品開発の能力があるかどうかとは関係なく、その発揮を阻害する組織的な要因があるのではないか、というものである。もっと具体的に言えば、この会社の事業ではプロジェクト単位で動くことがほとんどで、顧客企業から受注すると、技術部員はそこの工場に同社の製品あるいは技術を導入するために注力する。 このような産業機械業界だけでなく、IT業界(具体的にはシステムインテグレータ業界)や建設業界などもそうだが、プロジェクト単位で動く企業に非常に多いのは、「単年度黒字文化」とでも呼ぶべきものの存在である。それは、近年のプロジェクト会計が厳しくなった背景もあり、プロジェクト単位で利益を出すことを至上命題としており、そうすると基本的に1年度の中で黒字を出すことが求められる。 これは当然と言えば当然のことなのだが、イノベーション創出においては阻害要因になり得る。つまり、利益を出すまでの期間があまりにも短すぎるためにイノベーション創出のための実験期間がほとんど取れなくなるからである。この傾向、あるいは圧力はマクロ経済がデフレーションの傾向が強くなれば尚更強くなる。キャッシュの価値が上がってしまい、投資資産として保有すると、平たく言えば損になってしまうからである。さらには、コロナウィルスの問題によってデフレーション傾向は加速している(ご参考: 日本経済研究センター『コロナ下でのデフレ加速』 )。 つまり...

ビジネス着眼とは伸ばせる能力なのか?(ドリル受検対策⑥)

 結論から先に言えば、「ビジネス着眼」という能力項目も、十分に訓練可能なものである。決して先天的なものでもなく、伸ばせない能力でもなく、ビジネスの経験がなくても伸ばせるものである。 とはいえ、もちろん、ほぼ先天的にビジネス感覚の鋭い人はいるし、逆に、ビジネスに興味のない人だっている。なので、程度の差はあるが、それを伸ばしたいと思って効果のある方法を採っていれば訓練して伸ばすことはできる。 この「ビジネス着眼」という能力は、ノウハウやスキルとは別の次元のものである。近年はビジネス的なノウハウを提供している動画や文章が非常に増えている。集客方法、マーケティング方法、売上を伸ばす方法などといった、小規模ビジネス向けのノウハウから、効率的な仕事の進め方、コミュニケーション方法など、もっと一般的なノウハウや専門分野のノウハウまで、あらゆるノウハウに溢れている。 そういうもののうち、あなたが興味をもったノウハウを学ぶことを止めはしないが、それだけでは「ビジネス着眼」は伸びない。その学びをあなた自身の仕事の実践にどう活かすか、どこをどう変えるか、どこがうまくいってどこがうまくいかないか、うまくいかないところをどう解決するか…こうしたことを考えることで「ビジネス着眼」が伸びる可能性が出てくる。 つまり、ビジネス・ノウハウは、あたかもそれが唯一の正解であるかのように提示されることが多いが、それは必ずしも真実ではない。唯一の正解などこの世には存在せず、一瞬存在したとしても常に変化する。実際、たった5年前に提供されていたwebマーケティングのノウハウは、今でも全て有効かと言うと、そうではない。 むしろ、「唯一の正解などこの世には存在せず、一瞬存在したとしても常に変化する」ということを前提としないと、「ビジネス着眼」の能力は伸びないだろう。そこが出発点である。ちなみに、ビジネス・ノウハウがメディアに溢れていることは、ビジネス着眼、ビジネス感覚、ビジネス視点を作る上で邪魔になると私は考えている。なぜなら、独立・起業しようという人が、当たり前のように”正解”を求め、それに忠実にやることがビジネス上の成功の秘訣であると大いなる勘違いをするからだ。それはその人の成功の秘訣ではなく、ノウハウ提供者の成功の秘訣でしかない。(だからこそ、あたかもそれが唯一の正解だと思わせるような表現をしているケ...

イノベーション人材アセスメントをどう活かしたらいいか?

ここでは、イノベーション人材アセスメント(名称は提供サービスによって異なります)を受検された方がその結果を受け取った時のご参考までに、その活かし方を解説したいと思います。 まず、あなたの結果は、全体的にどうでしたか? 評価の低さにがっかりしていますか? それとも、全体的に高くてびっくりしていますか? あるいは、高いものも低いものもあった、という感覚でしょうか。 評価が全体的に低くても、または低い項目があっても、引け目を感じる必要はありません。これはあくまで「イノベーション創出人材としての素養」を測ったものであり、あなたのこれまでのキャリアでイノベーション創出を試みた経験が少なければ鍛えられない能力項目が多いはずです。その中でも高い項目があれば、それはあなたの天才的な部分か、イノベーション創出とは言えない経験の中で鍛えられた部分ではないでしょうか。 「イノベーション創出を試みた経験」は、もっていない方が大半です。しかし、経験がなくても、基本的には誰にでも可能性はあります。つまり、全ての能力項目が、鍛えれば伸びる能力ばかりです。なので、がっかりする必要は全くなく、ごく自然なことです。 また、能力項目は「全てにおいて一定レベル以上なければならない」わけでもありません。もちろん、イノベーション人材にとっては「ほぼ必須項目」と言えるものもありますが、それ以外は「あればあるほどいい」という位置付けです。 そもそも、「イノベーション創出」のプロセスでは、一般的な業務とはかなり違う側面が求められます。だからこそイノベーション創出の経験がなければこうした能力をもっていなくても全く不思議ではありませんし、経験があっても鍛えられていないケースも非常に多くあります。(ご参考: イノベーション失敗パターン④:【効率的作業組織 vs イノベーション創出組織】 ) さて、こうした前提がある中で、あなたはその結果を受けてどうしたいですか? 例えば、「私はイノベーション人材になりたいとは思わないから、この結果を受けてどうこうしようとは思わない。」という本音もあり得ます。それはそれで、もちろんアリだと思います。 もし、「この能力は高めてみたい」とあなたが思うものがあれば、ぜひ以下をご参考にしてみてください。 まず、能力項目には大きく分けて2種類あります。「人間力」と「創造的知的能力」です。このうち、人...

思考表現とは何か?(ドリル受検対策⑤)

思考表現とは、思考しながらその過程を表現することであり、表現しながら思考を整理し、さらに発展させることである。雑談や友達同士のお喋りのように、何を表現するかを予め決めずにその時々の反応や思い付きで表現する内容を決めることだが、ただし、思考を回転させながらそれをすることである。 したがって、沈思黙考タイプの人は少し苦手かもしれない。自分の中で黙ってじっくり思考し、結論を見つけてから今度はそれをどのように表現するかを考える…というパターンの表現では、ここでは不十分になりやすい。 イノベーションの創出プロセス…そんなに大袈裟ではなくても、何か従来にないものを創り出す要素がある集団での活動の中では、個々人の暗黙知を表現して共有し、形式知にしていく必要がある。1人の個人でやる活動なら自分一人の中でやればいいので共有は必要ないかもしれないし、感覚知で十分かもしれないが、集団となると、言語化や何かしらの表現は必要である。この点については、野中郁次郎氏のSECIモデルをご参考にしていただきたい。 多かれ少なかれ、「弁証法」的でもある。例えば、思考テーマがあり、まずはとりあえずの自分なりの答えを出す。しかしそうすると問題点や矛盾が出てくる。それに対してどう答えるか。こうした自問自答のような対話を繰り返す。 思考というものは、若干比喩的に言えば、自問自答のようなものである。自分で問いを作り、自分で答えを出す。それを発展させていく。どういう内容であれ、どういう方向性であれ、創造的思考を発展させるのがうまい人は、頻繁にこれをやる傾向がある。そうでなければ、基礎発想的なスキルで発案したアイデアでは、非常に薄っぺらくなりやすい。基礎発想はそれでいいのだが、それを十分に発展させ、深化させる必要がある。 私自身は、自分で客観的に見て、これが下手ではない。意識してそうするようにしていて、うまくなってきているのではないかと思う。つまり私が言いたいのは、訓練可能なスキルである。ちなみに、私はここにある記事は全てこの表現方法で書いている。書く内容を予め決めたりしていない。もちろん、大枠でのテーマはあるが、それに対して答えを出し、「自分が読み手だったら」そこで浮かぶ反論を問いにして、話を展開させている。いつの間にか長くなり、いつも何千字という文字を書いてしまう。 思考表現をしている人というのは、文章が長い傾...

上位概念化とは何か?(ドリル受検対策③)

イノベーション人材に求められる能力には色々ある。しかし「最低限これだけは共通して必要だ」というものは少ない。「我事化」や「知的好奇心」などといったところだと考えられる。しかし、それ以外では、「あればあるほどいい」し、「なければ始まらない」というわけでもない。 イノベーション人材に求められる能力というと、「創造性」「創造力」「クリエイティビティ」といった能力を一番先に思い起こす人が多いようだが、重要であることは間違いないが、唯一絶対の一番重要項目かというと、そうとは限らない。 私達は創造性のような能力を「(イノベーション人材に求められる)知的能力」に分類しているが、その一方で「(イノベーション人材に求められる)人間力」というカテゴリーもある。どちらの方が重要と言うことは難しいが、人間力が必要条件で、知的能力が十分条件のようなものだと考えられる。つまり、人間力は「なくてはならないもの」に近いが、それだけでイノベーションが起こせるわけではなく、その上に知的能力があって初めて実現できる可能性が出てくるわけだが、だからと言って保証されているわけでもない。人材育成やアセスメントに携わる者として、これほど難しいものはない。「難しい」と書いて「おもしろい」と読むのだが。 さて、そうした知的能力の中で重要なものの1つが「上位概念化」である。知財分野ではよく使われる用語でそこから転用したものであるが、意味は多少なりとも違う。上位概念化は知的能力の中でもとても難度が高く、これができる人というのはたくさんいるわけではない。少なくとも日常生活や一般的な職業の通常業務ではなかなか育ちにくい。 それでも重要なのは、特に「イノベーション・プロデューサー」の役割に特にこの能力が求められるからだ。(『 イノベーション創出の最重要人物:「イノベーション・プロデューサー」 』参照) 上位概念化とは、認識した具体的事象から抽象化し、上位概念を取り出すことである。上位概念とは、本質、構造、真の目的、共通性などのことで、どれも表面に現れて来ない。だから認識しづらいし、疑おうとも思わない。 例えば、テニスというスポーツにおいて、目に見えやすいのは試合結果や、ゲーム中の選手の動き方、表情などといったところだろうか。そうした段階を、一段上位概念化すると...

イノベーション実行人材の2タイプ:「実験家」と「遂行家」

イノベーション人材には「構想人材」と「実行人材」の2種類があり(『 イノベーション人材の2タイプ:「構想人材」と「実行人材」 』参照)、後者の実行人材には「イノベーション実験家」と「イノベーション遂行家」の2種類がある。 「実験家」の話の前に、上記の別記事で書いたが、イノベーション実行人材とは、「単純化して言えば、構想人材が考えた構想に対して、「それ、面白いかもしれない!」と思い、その実現のために自分でも工夫をしながら前進させていく人である。」 イノベーション人材というと、主に私達がイノベーション構想人材と呼んでいる人材のことを指すことが多いが、イノベーション実行人材もとても重要である。 また、イノベーション人材というと、研究開発に携わっている人のことを指すことも多いが、彼ら彼女らも大変重要だが、重要なのはそうした人材だけではない。ありとあらゆる職種でイノベーションは関係し得る。 例えば、イノベーション創出を目指して新商品を開発したとする。そのためにイノベーション人材を集めて開発したとする。しかし、その後工程で、製造方法や販売の方法、マーケティング戦略や知財戦略でもイノベーション創出のための協力がなければ難しい。後工程の人たちはイノベーション人材ではなくてもいいのだろうか。そこが「イノベーション実行人材」に私達が込めている主張である。その例で言えば、例えば営業担当者が、その商品を「面白い」と思い、「これはチャンスがあるぞ」と感じ、「こういうタイプの顧客にこういう訴求方法で紹介してみよう」という工夫は、イノベーション創出プロセスの一部であることは間違いない。 イノベーション実験家 上記の例のような「イノベーションの構想を実現するために、こういうことを試してみよう」と思い立って実行する人が「イノベーション実験家」である。 繰り返しになる部分もあるが、研究開発部門の技術者は往々にしてここである。必ずしも構想家ではないかもしれない。 もっと言えば、日本企業におけるイノベーションの試みは、「イノベーション構想」がないことがしばしば(おそらくほとんど)である。典型的なのは、研究開発部門に新技術のシーズから目新しい商品を開発させることだ。そこにはイノベーション構想がない。イノベーション構想とは、既存市場の一要素を上位概念化し(≒そもそも論で疑い)、「こうした方が遥かに良いものがで...

イノベーション失敗パターン⑥:【ようこそ、イノベーション創出という冒険の旅へ】

「 イノベーションの試みのうち8割がこの「失敗パターン」にはまる~① 」 「 イノベーション失敗パターン②:【イノベーションの目的のジレンマ】 」 「 イノベーション失敗パターン③:【遠い人】 」 「 イノベーション失敗パターン④:【効率的作業組織 vs イノベーション創出組織】 」 「 イノベーション失敗パターン⑤:【創造性】 」 の続きです。

イノベーション失敗パターン⑤:【創造性】

「 イノベーションの試みのうち8割がこの「失敗パターン」にはまる~① 」 「 イノベーション失敗パターン②:【イノベーションの目的のジレンマ】 」 「 イノベーション失敗パターン③:【遠い人】 」 「 イノベーション失敗パターン④:【効率的作業組織 vs イノベーション創出組織】 」 の続きです。

イノベーション創出の最重要人物:「イノベーション・プロデューサー」

別の記事で書いたが(『 「イノベーション人材の2タイプ:「構想人材」と「実行人材」 』)、大きく分ければイノベーション人材は2種類に分けられる。それがイノベーション構想人材と実行人材である。非常に単純化して言えば、構想人材は実行人材の能力の上に、構想力を持った人材である。実行人材には、従来にない構想に対して「面白い」と思って自分なりに考えて実行する能力が必要である。これも簡単に見えて実際には結構難しい。 この2タイプをより深く理解していただくためにも、それぞれを2タイプずつ、合計4タイプに分けたいと思う。 イノベーション構想人材 イノベーション・プロデューサー イノベーション事業家 イノベーション実行人材 イノベーション実験家 イノベーション遂行家 イノベーション・プロデューサー イノベーションをプロデュースする人が最上位にいるべきである。プロデューサーがいないとイノベーションの創出はなかなか難しい。イノベーションを掲げる企業にとっては最重要の人材だが、残念なことに、一般的に言われている「イノベーション人材」は、どうやらプロデューサーはあまり含んでいないように見える。 プロデューサーの役割を理解していただくためには、イノベーションも分類しておきたい。「構想イノベーション」と「実現イノベーション」の2種類である。構想イノベーションとは、それまでのゲームのルールや顧客のライフスタイルを変えたり、従来とは異なる視点で事業や商品を位置付けたものである。 実現イノベーションは、そこまでのことを狙わない。構想があればその実現のための革新であり、構想がなければ、従来のゲームのルールの延長線に乗った上で起こす小さな進歩である。例えば、外出時でも自宅のペットの様子が見えるアプリがあるが、これは実現イノベーションと考えられる。従来なかったものだが、従来の延長線上である。 日本企業が「イノベーションを起こそう」と提唱して、その結果出てきた事業や商品にはこの「実現イノベーション」が多い。ほとんどと言っていいかもしれない。ただし、そのうちの非常に多くのケースで、構想があるようには少なくとも見えない。 この構想の大元やきっかけを作るのがプロデューサーの役割である。その中でも重要なのが、「顧客の視点で『そもそもの問い』を投げかける」という行為である。『そもそもの問い』は、従来のサプライヤーが提供...

日本人管理職の最大の弱点、「創造性」

私は約20年、様々な人材の能力アセスメントに関わってきたが、そのほとんどは日本人である。そのうち、新卒採用でない部分で言えば、おそらくその8割以上は日本企業に勤めている方々である。管理職になる手前ぐらいの方が多く、経営層候補、事業部長なども含まれている。多くはインタビュー形式のアセスメントである。 そうした人材に共通する強みや弱みがある。おそらく、アセスメントに直接携わったことがない方からすると驚くほどだろうと思うが、企業によって色がある。ただ、そうした企業によっての特徴も、個人個人の特徴も均した時の強みと弱みである。 強みとしては、バイタリティ系の能力や、ストレス耐性系の能力、情報や状況を把握する能力が共通している。要は、情報を正確に理解して、粘り強く、我慢強く最後までやり切る、という人の姿を思い浮かべてもらえれば、それが日本のホワイトカラーの管理職層の典型像と言える。これに加えて、ここ20年ほどは、統計的な検証はしていないが、徐々に分析力系の能力が高まっているように思う。 共通する弱みは、創造性系の能力と戦略策定系の能力、俯瞰系(ビジョン構築や長期的な計画力など)の能力の3分野である。強みと合わせて典型像を言語化するなら、 「情報を正確に理解して論理的に分析し、粘り強く、我慢強く最後までやり切るが、今までにないやり方、人と違うやり方を自分で考えることが少なく、現場視点ではあるが視点が低い。」 という像になる。 しかし、創造性というものは、測定が難しい。人が人を「創造的だ」と思うのは、人が何らかのアウトプットをしたものを見て初めて言えることだからだ。「この絵はクリエイティブだなぁ」などと。アセスメントが評価するのも、何か構想したアウトプットに、目新しさがどれほど見てとれるか、といったことである。 しかし、創造性というものは、思考プロセスなのである。思考といっても左脳的というよりは右脳的で、直感的である。人の頭の中は、かち割っても見ることができない。 しかも創造性は定義でさえ難しい。定義がなければ測定もできないし、測定方法が限られているのでそれに合わせた定義は意味が薄れたりもする。私は創造性を「自分の知識にないことを考え出す思考プロセス」だと定義しているが、定義や測定方法についてご関心があればぜひ心理学の論文や書籍を探ってみていただきたい。どれだけ難しいかがお分かり...

創造性とは、伸ばせる能力なのか?

ドリル・アセスメント では、創造性を測定しやすい。それはアウトプット能力全般に関わる。 よくこういう声を聞く。「自分はクリエイティブな仕事に就いてないから…。」広告代理業のクリエイティブ職や、アニメ制作会社のアニメーター職がその「クリエイティブな仕事」だと思っていらっしゃるのかもしれないが、言っておくが、全ての仕事はクリエイティブになり得る。創造性を使う余地がある。命令には絶対服従をすべき軍隊の1歩兵であっても、ほふく前進で創意工夫できるかもしれない。 創造性というものは、何も、光るビジネスアイデアや商品アイデアがポンっと降りてくるような能力とは限らない。心理学でも創造性のことは色々と語られているが、もっとあらゆる場面で使うものである。毎日同じ経路で往復している人にとって、寄り道や経路を変えることも創造性だろう。何か全く別の目的を合わせてやることも創造性だろう。スポーツで、フォームやスウィングなど、新たに試してみたい体の動かし方を思い付くことも創造性だろう。 おそらく、上記の例を読んで、「そりゃそうだよね、うん、それが創造性だよ、当然。」という風に感じられた方は、高い確率で創造性が高いと思う。「えっ、そんなものまで創造性なの?そうは思ってなかった…。」と感じられた方は、申し訳ないのだが、高い確率で創造性が低いと思う。 なぜそう言えるかというと、創造性は誰もが身に付けられる能力である。(もちろん、その程度には個人差があるが、基本的に思考ができる人の中には、全く身に付けられないという人はいない。)しかし、それを身に付けていない人というのは、自分で身に付けることを遮ることをしているから身に付けていないのである。 それはつまり、自分で却下しているのである。あるいは否定しているのである。もっと言えば、自分は何かを創造できない人間だと思っているのである。できないことが先で、自己否定が後なのではない。自己否定があるからできないままなのである。現に私自身も、特に10代、20代ぐらいの頃は、まさか自分が創造的だとは思っていなかったし、客観的に言っても違うと思う。しかし特に30代以降、創造性は増してきた。 では、創造性のハイパフォーマーを分析してみよう。よく、「アイデアマン」(もちろんアイデアウーマンでもいい。)と呼ばれる人がいる。あなたの周りにも1人は思い当たる方がいるのではないだろ...

離職率の高さとイノベーションの意外な関係性

ある会社が離職率の高さを問題視していた。この会社は、大きな括りで言えば"B to B"のサービス業であり、顧客企業のためにカスタマイズしてサービスを提供している。 厳密に言うと、離職率が他社に比べて飛び抜けて高いかどうかは分からない。そこも問題かもしれないが、むしろもっと重要な問題は、「顧客企業からも感謝されるような、優秀なサービス提供者が次々に辞めていく」ことだそうだ。 辞める理由として本人達が挙げることで最も多いのが、「やりたいことが今後もできそうもない」ということだったという。 こうした現象に対して、少なからず影響を及ぼしているのではないかと私が気付いたのがこの会社の組織文化である。非常に強いトップダウンの指示系統があり、要するに「上の言うことが絶対」であり、いわゆるマイクロマネジメントをしている管理職が多そうに見える。 現に、この会社が私達と共に取り組もうとしている内容にも上位層からストップが何度もかかった。この会社としての事情、歴史、文化、戦略を尊重した上で言うが、「何のためにそんな細かいことを気にしているのか」理解が難しいケースもあった。 このケースの難度は非常に高い。この問題に取り組むプロジェクトのメンバーの方々は非常に問題意識が高く、本気でこのことを問題視していた。しかし、その問題の本質的原因にあるのは組織文化であり、かなり根本的な変革を目指すことを、多かれ少なかれ、意図しようとしまいと、意味してしまう。その挑戦はまず間違いなく、その組織文化によって阻止されてしまう。 組織文化とは、エドガー・シャイン氏の定義に基づいて言えば、「メンバー個々が持ち、組織として共有している暗黙の前提」のことである。組織文化は、人が2人以上集まって特定の目的を果たそうとする場合に、必ず持つものと心理学では認識されている。それは何のためにあるかと言うと、「組織」という幻想を共有し、それを同じ形で持続するためであると考えられる。ある意味、動物には必ずある「種族保存本能」の代替機能であると言えるのかもしれない。転職して全く異なる組織文化を持った会社に移ったことのある方なら、おそらく容易に理解していただけるのではないかと思う。 繰り返すが、組織文化は多かれ少なかれ「組織が同じ形で持続するためにある」ものなので、多かれ少なかれ変化を嫌...