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イノベーション失敗パターン⑥:【ようこそ、イノベーション創出という冒険の旅へ】






【ようこそ、イノベーション創出という冒険の旅へ】 
 
先ほどのストーリーには、もっと「間違い」があります。そして、「では、どうすべきか?」については、私はまだそんなに深く、詳しくは書いていません。そもそも、イ ノベーションの定義も、あえてここではしていません。 
 
が、残念ながら、文字数の関係でそろそろ締めなければなりません。(やはり切迫は どこにでもあるもんです(笑))。 
 
私はイノベーション・コンサルティングも他社さんでさせていただいていますが、そ の中で私は当事者の皆さんに何度も何度も問いかけます。 
 
「あなたがやりたいのは、現状の維持・向上ですか?それともイノベーションですか?イノベーションは難しいし大変ですよ。でも人生の景色が変わるのも確かです。本 当にやりたいのはどっちですか?」 
 
私は本心から、全員に「イノベーション」と答えてほしいとは思っていません。 
 
ただ、「イノベーションがやりたいです!」という時のその方々のキラキラした顔、 何かのスイッチが入った時の表情は、たぶん一生忘れられません。 
 
たとえその後、その方々が 3 連敗したとしても、そこには他で代替しようのない成長のチャンスがあるはずです。挑戦しない人には成長のチャンスは限られたものでしかあ りません。 
 
 
【イノベーションとは圧倒的な愛情提供】 
 
私は、最初に申し上げた通り、イノベーション創出支援をしていながら、イノベーションに拘りがありません。イノベーションを目的にはしていません。私が仕事をする目 的は、ビジネスを通じて愛情を提供することです。 
 
早いものでもう10 年以上前の話ですが、私は自分の会社を立ち上げてから数年後、 大きな挫折をしました。巨大な無力感と、それにも関わらずやってくる試練の毎日。2年間ぐらい無給だったと思います。それを救ってくれたのは、自分による解決というよりも、様々な恩人の方々でした。 
 
試練を乗り越え終えたある日、ハッと気付きました。恩人や家族にもらった愛情を、 自分の中に滞留させてしまうほどの愚行はありません。私の存在は両親や先祖にいただいたものです。恩人によって支えられているものです。1945 年に長崎に原爆が落とされました。米軍の計画では八幡に落とす予定でした。当時 2 才だった私の母は八幡にいました。私の存在は、長崎の被害者にいただいたものです。私の存在は、人々の愛情で 成り立っています。涙が止まらなくなりました。当たり前に見えて、全然当たり前では ありません。 
 
私はビジネスを何のためにやっているか。顧客、社員、投資家に愛情を提供すること です。金儲けは、その大きさ、インパクトによる結果論です。ビジネスとセットで語ら れることのほとんどない「愛情」を私の信念にしようと決めました。それ以来、驚くほ どあらゆることがうまくいくようになりました。 
 
ただ、愛情と甘やかしは違います。例えば、顧客からお金などの正当な代償をいただ かずに価値を提供すると、その顧客は長期的にダメになっていきます。顧客にも社員に も投資家にも、対等に、いい意味で厳しく接することが長期的には彼ら彼女らへの本質 的な愛情提供だと、私は考えています。 
 
ビジネスによる愛情提供は、「相手が欲しいものに応える」ことよりも、「相手の期待 を超えたものを提供する」方が、顧客、社員、投資家は喜んでくれます。自分が常にで きているとは思えませんが、できる限りそうしたいといつも思っています。 
 
数年前に気付きました。それって、言い方を換えるとイノベーションなんですよね。 ビジネスによる愛情提供が、従来よりも圧倒的に大きくなることです。プロダクトアウ トな技術だけの革新や、利己的な利潤独占は、私の言うイノベーションでは全くありま せん。冒頭に、「私はイノベーションに全く拘りがない」と申し上げたのは、あくまで 真の目的は、ビジネスで愛情提供をすることだからです。根源的には、ビジネスである こと、愛情提供であることを忘れたり後回しにしたイノベーションが失敗するのだと、 私は確信しています。社会に大きなインパクトを与えるような愛情提供をすることを、 私は本気で、大マジメに追求しています。私の冒険の旅はまだ始まったばかり。 
 
 
 
これを読んでくださっている皆さん、とりわけ、本気でイノベーションに挑戦しようとい う方々、お一人おひとりの人生にとっても、これから素晴らしい冒険となりますように。



宮田 丈裕 (当社代表)




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