スキップしてメイン コンテンツに移動

イノベーション失敗パターン⑤:【創造性】








【創造性】 
 
効率的作業組織に比べて、相対的に「余裕」の重要性が高い理由の一つは、創造性の発揮メカニズムに関係しています。 
 
心理学で言われていることですが、創造性は、内発的動機によって高まります。つまり、その仕事をやることそのものを面白いと感じていたり、楽しいと感じているような状態であればあるほど、創造性が出てきます。もちろん、個人差はありますよ。 
 
ぜひ思い出してみてください。あなたがこれまでで最も多くの発想をした時はどんな状況にありましたか? 
 
または、あなたが今までで一番、時間を忘れて何かに没頭し、それをいつまでもやり続けていたい、というような体験はありませんでしたか?その時に、あなたの創造性は発揮されませんでしたか? それが内発的動機です。 
 
ご想像の通り、その一方で、「外発的動機」というものがあります。 
 
外発的動機とは、その仕事をやることによって、その行為そのもの以外から動機付けされることです。例えば、この仕事をやり切ると上司に褒められる、ボーナスがもらえる、出世につながる、あるいはやらなければ怒られる、減給される、降格させられる、などです。 
 
外発的動機は創造性に対してどのように作用すると思いますか? やはり高める? それとも何も作用しない? 
 
両方違います。基本的には、外発的動機は創造性を減衰させます。 
 
つまり、例えばボーナス目当てでやる仕事ほど、あなたの独自の発想は少なくなるのです。あるいは、ノルマ達成に懸命であればあるほど、創造性は出て来なくなってきます。 
 
したがって、あなたがもし「イノベーションを起こせ」と上位層から指示されたら、ニヤッと笑ってください。そして余裕を確保してください。 
 
そして、自分が今まで「個人的に」持っていた問題意識や、興味を追求してください。 組織のことはさて置いて、個人としての追求を優先してください。ただし、ある程度長い期間が終わる頃には事業化して、ちゃんと儲けてね、ということが条件となりますが。 
 
もし、あなたが部下に「イノベーションを起こしてくれ」なんて指示してしまったら(笑)、彼ら彼女らが何をしていようと口出しは無用です。 
 
では、もし、儲けられなかった、イノベーションを失敗したらどうするか? あなたが指示した上司ならどうしますか? 
 
答えは単純です。「許す」です。 
 
日本にいる方々なら誰でも知っているような某企業では、「3 回までなら謝れば許す」としています。 3 回が妥当かどうかについての議論はどうでもいいのです。重要なのは、内発的動機を高めるために余裕を与えることです。 
 
先ほどのストーリーでは、A 社長がカンカンでしたね。おそらく C さんが創造性を発揮しようとすることは、もうこの先ないかもしれませんね。 
 
ただし、いつまでも許すのも良くありません。3 連敗したら潔く降格ですよ。ただし 「降格後も、予算枠は小さくなるけど、またどんどんチャレンジしてくださいな」とい うのも、余裕と切迫の振り子の例と言えるでしょう。 
 
どうでしょう。あなたの上司は余裕を与えてくれそうな人ですか? 
 
部下に十分な余裕を与えられる余裕があなた自身にありますか? 
 
もし答えが No なら、周囲の人たちにこのメルマガを共有してみてくださいね。もしそこから何かやってみようか、という話・雰囲気になってきたら、私はとても嬉しいです。 
 
ただし、そこから先は長い道のりですからね(笑)。 
 
(続く)

こちらもご参考にしてください。



宮田 丈裕 (当社代表)


次回のシリーズ第6回はこちら:


※この記事は、引用・リンクは自由にしていただけます。
ただし、当社の会社名、記事の著者名を引用していただくことと、
どのようなサイトなどのメディアで取り上げるかを
当サイトの「お問い合わせ」から当記事タイトルと共にご一報いただくことを
条件とさせていただいております。





このブログの人気の投稿

イノベーション人材の2タイプ:「構想人材」と「実行人材」

イノベーション人材のタイプには、大きく分けると2種類がある。 イノベーション構想人材 イノベーション実行人材 これらは、当社が音頭を取って開催したイノベーション研究会「FURICO」が出した結論の1つである。 「イノベーション人材」という言葉は今でこそよく聞かれるようになったが、多くの場合、構想人材を指しているように見える。つまり、何らかの革新的な事業や商品の開発を発想し、計画するような人である。これについては、別の記事で、もう少し細分化して説明したいと思う。 (『 イノベーション創出の最重要人物:「イノベーション・プロデューサー」 』 『 経営の中でも最高難度:「イノベーション事業家」 』) イノベーションの創出において、実行人材も同様に重要である。構想人材が自分の構想を、自ら実行することはよくある。しかし、それだけだと難しいというケースは極めて多い。したがって、実行人材を巻き込むことが肝となるケースが多い。 イノベーション実行人材とは、単純化して言えば、構想人材が考えた構想に対して、「それ、面白いかもしれない!」と思い、その実現のために自分でも工夫をしながら前進させていく人である。 そのためには「我事化」や「知的好奇心」が大変重要である。こうしたものを持っていて、それによって自分を”点火”できれば、その他の能力は「あればあるほどいい」という位置付けである。こうしたイノベーション実行人材は意外に多くない。構想人材も極めて少ないが、実行人材も少ないのが現状のように見受けられる。 当社の推計だが、イノベーション構想人材は日本の全労働人口の0.05~0.1%程度、実行人材は1~5%程度しかいない。その他はどういう人か。与えられた仕事を真面目にこなし、自分の”個人的”で”勝手な”好奇心から動いたりせず、我慢強く正確に仕事をやり続ける人たちがその中心である。この人たちは「効率的作業組織」においては大事だが、「イノベーション創出組織」においての優先順位は下がる。 つまり、日本は全体的に言えば、「効率的作業組織」でハイパフォーマンスを発揮する人たちを育ててきた。今もそれは変わらない。それが悪いわけでもないが、それは「イノベーション創出組織」でのハイパフォーマーの姿とはかなり違い、そういう人たちを育ててきていない。もっと正確に言えば、そういう人たちが育つ環境を用意していないケース...

経営の中でも最高難度:「イノベーション事業家」

イノベーション人材には「構想人材」と「実行人材」の2種類があり、前者の構想人材には「イノベーション・プロデューサー」と「イノベーション事業家」の2種類がある。 (参考記事『 イノベーション人材の2タイプ:「構想人材」と「実行人材」 』 『 イノベーション創出の最重要人物:「イノベーション・プロデューサー」 』) イノベーション事業家 ビジネスとして持続可能な、あるいは発展可能な状態を構想し、実現をリードする役割がイノベーション事業家である。現実には、プロデューサーと事業家を同一人物が兼ねているケースも多いと思われる。 これは、例えばグループ会社の経営を経験した人ならできるかと言えば、必ずしもできるとは限らない。じゃあ親会社の経営経験者ならできるかと言えば、それも必ずしもできるとは言えない。イノベーション事業家に求められる能力は、一般的な会社経営者や事業経営者に求められる能力とはまた別物である。 その違いの中で大きいと考えられるのは、リスクに対する姿勢である。一般的経営者はリスクを把握した上で、それを取るか取らないかを判断する。イノベーション事業家は、もちろんそういうケースもあるが、それに加えて、自分でリスクを軽減することが求められる。元々が高リスクのステージなので、そういう行為が重要な意味を持つ。 また、高いリスクを取りたがる人はイノベーション事業家には向いていない。 ただし、こうした話は一般論であり、例外はたくさんあるので一概にそうでなければならない、という言い方はできない。 いずれにしても言えるのは、イノベーション事業家がすべきことは経営の中でもかなり難しいことであり、自分独自の事業創造の方法論を持っているということは言えるかもしれない。独自の方法論を持っているということは、自分の中で戦略・戦術に組み立て方を工夫・試行錯誤して考え、検証してきた経験知がある、ということだろう。 しかしながら付け加えなければならないのは、そんな試行錯誤と検証が、今の日本で許される環境というのが多くあるだろうか。もちろん、多少そんな余裕のある業界トップ企業もあるかもしれないが、そう多くはないかもしれない。いずれにしても、「余裕」がある状況がなければイノベーション人材、特に構想人材は育ちにくい。 また、大企業社員に時々いるが、もし自分が小規模企業の経営をしたら簡単にうまくいく、と考えて...

イノベーション創出の最重要人物:「イノベーション・プロデューサー」

別の記事で書いたが(『 「イノベーション人材の2タイプ:「構想人材」と「実行人材」 』)、大きく分ければイノベーション人材は2種類に分けられる。それがイノベーション構想人材と実行人材である。非常に単純化して言えば、構想人材は実行人材の能力の上に、構想力を持った人材である。実行人材には、従来にない構想に対して「面白い」と思って自分なりに考えて実行する能力が必要である。これも簡単に見えて実際には結構難しい。 この2タイプをより深く理解していただくためにも、それぞれを2タイプずつ、合計4タイプに分けたいと思う。 イノベーション構想人材 イノベーション・プロデューサー イノベーション事業家 イノベーション実行人材 イノベーション実験家 イノベーション遂行家 イノベーション・プロデューサー イノベーションをプロデュースする人が最上位にいるべきである。プロデューサーがいないとイノベーションの創出はなかなか難しい。イノベーションを掲げる企業にとっては最重要の人材だが、残念なことに、一般的に言われている「イノベーション人材」は、どうやらプロデューサーはあまり含んでいないように見える。 プロデューサーの役割を理解していただくためには、イノベーションも分類しておきたい。「構想イノベーション」と「実現イノベーション」の2種類である。構想イノベーションとは、それまでのゲームのルールや顧客のライフスタイルを変えたり、従来とは異なる視点で事業や商品を位置付けたものである。 実現イノベーションは、そこまでのことを狙わない。構想があればその実現のための革新であり、構想がなければ、従来のゲームのルールの延長線に乗った上で起こす小さな進歩である。例えば、外出時でも自宅のペットの様子が見えるアプリがあるが、これは実現イノベーションと考えられる。従来なかったものだが、従来の延長線上である。 日本企業が「イノベーションを起こそう」と提唱して、その結果出てきた事業や商品にはこの「実現イノベーション」が多い。ほとんどと言っていいかもしれない。ただし、そのうちの非常に多くのケースで、構想があるようには少なくとも見えない。 この構想の大元やきっかけを作るのがプロデューサーの役割である。その中でも重要なのが、「顧客の視点で『そもそもの問い』を投げかける」という行為である。『そもそもの問い』は、従来のサプライヤーが提供...