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ラベル(経営(人材・視点))が付いた投稿を表示しています

社員の顧客視点の劣化は会社にとって命取り

これを書いている今のつい数時間前の話だが、日本の某新聞社が、自社の電子版の広告キャンペーンをやっているのを目にした。そこでは、その新聞電子版のサブスクリプションを止めると「ビジネス実践力がつかない。つけるためには継続が大事。」というような内容を訴求していた。 私は甚だ疑問なのだが、これは何か証拠でもあるのだろうか。継続した人のグループと継続しなかった人のグループで、その人たちのビフォーとアフターとの差に有意な差があったとでも言うのだろうか。百歩譲って差があったというなら、本当にどんな職種においてもその差があると言えるものなのだろうか。 私がこう反論するのは、確信に近いものがあるからだ。まず関係ない。論理的に考えれば関係あるはずがない。「ビジネス実践力」をどう定義するかにもよるが、わざわざ「実践力」を切り取っているのだから、思考面は含めないと考える方が自然である。そうだとすると、人を動かしたり心を動かしたりする感受性を含めたコミュニケーション面や、他者と信頼関係を構築するところや、信頼関係を構築する過程でのパーソナリティの面、あるいは専門的なテクニカルスキルの面が主に関連してくる。新聞の電子版を読み続けると、コミュニケーション能力やパーソナリティやテクニカルスキルなどが上がるのだろうか。そうだとしたらその合理的な理由は一体何なのか。 二百歩譲って、「ビジネス実践力」には思考面やその前提知識も含まれているとしよう。そうだとすると、例えば私が関わらせていただくことの多い「経営視点」を養成するのに新聞を使うことはできる。簡単に言えば、「自分がその記事の当事者の立場だったとしたら、何を感じ、何を考え、どう解決しようとするか」を想像し、できるだけ多くの状況設定や選択肢を想定することで擬似経験の幅や当事者意識の強さを広げたり高めたりすることができるからだ。しかし、「新聞(の電子版)を読んでさえいれば自動的にビジネス実践力(なるもの)が伸びる」わけではない。そういう意図を持って読む必要があるからだ。 いや、広告では「自動的に伸びる」とは言っていない。私がわざわざこんな文章を書いてまでこの広告を問題視しなければならないと考えたのはそこに関係している。「サブスクリプションを止めると伸びなくなる」というような表現をすることで、少し大げさに言えば「脅し」ているわりに「自動的に伸びる」ことは...

今だから問いたい。『働き方改革』がイノベーションを促進するって、正気ですか?

もしかしたら、既に忘れ去られつつあるのかもしれないが、昔「働き方改革」というものがあった。いや、昔のことに思えるが、調べてみると、2016~18年頃に盛んに議論されていた。 ブラックな働かせ方が横行していた(している?)日本において、私もその必要性は理解できるが、全くもって非論理的な議論も含まれていた。何年かして検証すべきだと思っていたのだが、そろそろ検証してみようと思う。 日本で働き方改革が政府主導で推進され、2017年には、政府による「 働き方改革実行計画 」の中でこう謳っている。 「経済成長の隘路の根本は、人口問題という構造的な問題に加え、イノベーションの欠如による生産性向上の低迷、革新的技術への投資不足。」 ちなみに、私は知らなかったのだが、「隘路」というのは「あいろ」と読むそうで、細くなった道というような意味で、つまりボトルネック、問題点というような意味のようである。さほど一般的でない表現をすることに何か少しでも意味があるのだろうか。 そして、「日本経済の再生を実現させるためには、投資やイノベーションの促進を通じた付加価値生産性の向上と、労働参加率の向上を図ることが必要。」と。 なるほど、と。ただし、ここから先は私にはほとんど理解できないのだが、そのための方法として挙げられているのは、全く悪意なく要約すると、以下のようなもの。 「非正規」という言葉を一掃すれば、モチベーションが上がって労働生産性が上がる。 長時間労働を是正すれば労働参加率が上がり、労働生産性が上がる。 単線型の労働市場・企業慣行が柔軟になれば、付加価値の高い産業への転職・再就職が増え、全体の生産性が上がる。 1つ質問したくなるのは、「非正規、長時間労働、単線型キャリアパスをなくせばイノベーションが起こって生産性が上がるのですか?」という点であり、もしその答えが「そうだ」というなら、さらに「正気ですか?」と問いたい。 いや、それでも成果が出ていればいいのかもしれない。その場合は潔く考えを改めたい。新型コロナウィルスが蔓延した2020年よりも前、2019年度のデータを見てみると付加価値は残念ながら上がっていない。(「 経済産業省企業活動基本調査 」) 新型コロナウィルスの蔓延で経済が縮小しているので2020年以降を見ていないが、仮にこの間、リモートワークが普及したことが「働き方改革」に貢献して...

ビジネス着眼とは伸ばせる能力なのか?(ドリル受検対策⑥)

 結論から先に言えば、「ビジネス着眼」という能力項目も、十分に訓練可能なものである。決して先天的なものでもなく、伸ばせない能力でもなく、ビジネスの経験がなくても伸ばせるものである。 とはいえ、もちろん、ほぼ先天的にビジネス感覚の鋭い人はいるし、逆に、ビジネスに興味のない人だっている。なので、程度の差はあるが、それを伸ばしたいと思って効果のある方法を採っていれば訓練して伸ばすことはできる。 この「ビジネス着眼」という能力は、ノウハウやスキルとは別の次元のものである。近年はビジネス的なノウハウを提供している動画や文章が非常に増えている。集客方法、マーケティング方法、売上を伸ばす方法などといった、小規模ビジネス向けのノウハウから、効率的な仕事の進め方、コミュニケーション方法など、もっと一般的なノウハウや専門分野のノウハウまで、あらゆるノウハウに溢れている。 そういうもののうち、あなたが興味をもったノウハウを学ぶことを止めはしないが、それだけでは「ビジネス着眼」は伸びない。その学びをあなた自身の仕事の実践にどう活かすか、どこをどう変えるか、どこがうまくいってどこがうまくいかないか、うまくいかないところをどう解決するか…こうしたことを考えることで「ビジネス着眼」が伸びる可能性が出てくる。 つまり、ビジネス・ノウハウは、あたかもそれが唯一の正解であるかのように提示されることが多いが、それは必ずしも真実ではない。唯一の正解などこの世には存在せず、一瞬存在したとしても常に変化する。実際、たった5年前に提供されていたwebマーケティングのノウハウは、今でも全て有効かと言うと、そうではない。 むしろ、「唯一の正解などこの世には存在せず、一瞬存在したとしても常に変化する」ということを前提としないと、「ビジネス着眼」の能力は伸びないだろう。そこが出発点である。ちなみに、ビジネス・ノウハウがメディアに溢れていることは、ビジネス着眼、ビジネス感覚、ビジネス視点を作る上で邪魔になると私は考えている。なぜなら、独立・起業しようという人が、当たり前のように”正解”を求め、それに忠実にやることがビジネス上の成功の秘訣であると大いなる勘違いをするからだ。それはその人の成功の秘訣ではなく、ノウハウ提供者の成功の秘訣でしかない。(だからこそ、あたかもそれが唯一の正解だと思わせるような表現をしているケ...

名リーダーの条件② ~ 教えないこと

ここでは、「教えない」という名リーダーの特長について書きたいと思う。これは『 名リーダーの条件① ~ 普通でないことをやろうとする才能 』でこのように触れたが、 次に、「あまり教えない」ということ。教え魔に名コーチはいない。ほとんどのケースで。これを書き始めると長くなるので、これはこれで別に書きたいと思う。 それがこの記事である。教えないことというのは人の成長の促進…つまり教育には大変重要なことである。 「いやいや、義務教育では、先生は『教えること』しかしてないじゃないか?」という反論があるかもしれない。おっしゃる通り。だから義務教育が問題だらけなのだ。 「いやいや、教えることが身になることもある。『教えない』となると、その機会も奪うことになるじゃないか?」という次の反論があるかもしれない。その通りで、では、どのようなタイミングが「身になる」タイミングか、ということが問題なのである。そのタイミングを全く見ずに教えようとするのが私の言う「教え魔」である。教え魔はこんな風に考える。説明・解説がわかりやすいことが良い教え方だと。これは完全なるプロダクトアウトである。 そのタイミングを見極めずに人に教えた経験は誰にでもあると思う。その結果は「教えたところで何も変わらなかった」ということが多いと思う。私が見てきた限りではあるが、教えているシーンの、少なく見積もっても半分以上はタイミングを見極めていないように見える。 タイミングとはどういう時なのか。『 「人を育てようとすること」の大きな落とし穴 』にこんなことを書いた。 「あなた自身が成長してきた過程を思い起こしてください。あなたは『上司が思った通りに成長しよう』と思って成長しましたか?違うはずです。あなた自身が『こういう能力が自分には必要だ』と思ったから努力してそれを成し遂げたはずです。どう成長したいかを決めるのは本人でしかありません。『上司の意図通りに育てられる』という暗黙の前提が全くの間違いなんです。」 タイミングとは、「本人が必要性を感じている時」である。できれば「痛感している時」である。何回やってもうまくいかない時。どうやってもうまくいかない時。やり方は間違っていないはずなのに結果がついてこない時。どうしたらいいのかわからなくなってしまった時。 こういう状態になるのは、「良くない結果が出てすぐ」ではない。「何回やって...

名リーダーの条件① ~ 普通でないことをやろうとする才能

私はスポーツの名将や名コーチが好きで、そのチームの試合を見たり、自叙伝のような本を読むことは趣味と言ってもいい。スポーツと言っても、チームスポーツの球技がほとんど。ただし、純粋な趣味と言い切れないのは、それはリーダーシップの教科書のようなものだからだ。 どういう人が名将・名コーチか、という定義というか条件というのは人によって色々だろうが、好成績を継続的に上げることと、継続的に優れたプレーヤーがその人の下で育つことと私は思う。その2つは相互補完関係にあるが、既に完成されたプレーヤーを集めて好成績を上げることも可能なので、その2つの両方が揃っていることだと考えている。もちろん、そのようなことも簡単ではないと思うが。 ある時、私は「私が思う(競技を越えた)名将・名コーチの共通項って、一体何だろう?」と疑問に思った。そう思うと調べずにはいられなくなった。もちろん、お国を問わず。 まず最初に発見したのは、「人間味を出す」ということだった。もちろん多少の演技や方便もあるだろうし、全ての人ではないが、「自分らしい、一人の人間として存在する」ということだ。偉そうにすることはもちろんあまりないし、何か演技していたり、過度に我慢したり…などといったことをする人は少なかった。 この点は私にとってはちょっと意外で、「あえてプレーヤーとは距離を置く」とか、「威厳を保つ」とか、そういう人がもっと多いかと思いきや、実際にはそうではない人の方がずっと多い。 次に、「あまり教えない」ということ。教え魔に名コーチはいない。ほとんどのケースで。これを書き始めると長くなるので、これはこれで別に書きたいと思う。( 「名リーダーの条件② ~ 教えないこと」 ) この2つを見つけて思ったのは、「名将・名コーチはその人らしくあり、自然体が多くて、あまり教えることがなく、何気なく雑談していることが多い … それって、普通の人だな。他に何かないんだろうか。何か特別な何か…。」 その後、しばらく探していたのだが、共通しているとまで言えることが全然なかった。 しばらくして気付いた。共通項がないし、あっても普通のことということは、「それぞれ独自のやり方でやっている」ということと言い換えられる。物事には原因と結果とがあるが、普通のやり方(原因)をやれば普通の結果が返ってくるわけであって、普通ではない結果を出している人は普通で...

テレワークによるストレス問題

テレワーク、あるいはリモートワークでコミュニケーション不足になることが指摘されている。そのためにコミュニケーションを”追加”するような取り組みもされていることも多いようだが、それは短期的には必要なことは言うまでもないが、中長期的にはもう少し根本的な部分の変化が必要になってくるだろう。 その話をするために、少々回り道をさせていただきたいと思う。 別の記事*にも書いたが、人間が集団を構成する時に「暗黙の前提」を共有する。それによって「組織の一員になれた」などと実感する。この暗黙の前提の集合を組織文化という。組織文化は組織に固有のものだが、日本に拠点のある組織(つまり日本企業だけでなく外資系企業も含む)はある程度共通して持っている「暗黙の前提」がこのテレワークのコミュニケーション不足問題と関連しているので、日本の文化といってもいいかもしれない。 *   『 離職率の高さとイノベーションの意外な関係性 』    『 リーダーが全員の意識を変えようとする時 ~ 組織文化の変革 』 ここで関係する暗黙の前提とは、「意思決定は、関係者の合意によってされる」という前提である。「そんなこと、当たり前じゃないか」と思われる方もいるかもしれないが、必ずしも当たり前ではないし、当たり前だと思うということは「暗黙の前提」になっている証拠でもある。 ボトムアップ文化の色合いが強い組織ほど、この傾向が強いと言えるかもしれない。ボトムアップ文化とは組織の末端、つまり、いわゆる「現場」が強い発言権を持つことだ。本社側からすれば、何か施策を打ち出す時にはやたらと現場に気を遣ったり、現場に浸透させるのがやたらと説得やら説明やら個別対応やらで難しかったり、時には現場の抵抗でとん挫してしまったり、役員会が部門代表の場だったり…そういう風な現象として現れる。 だからこそ、やたらと「根回し」や「調整」が必要だったりもする。これは残念ながら、1人あたり生産性にも悪影響を及ぼしていることは間違いないだろうし、非常に多くのケースで海外現地法人などから出る「本社は意思決定が遅い」という不満にも繋がっていることも間違いないと言っていい。 しかし、あなたの所属する組織が、例えばオーナー経営者が誰よりも大きな発言権を持つ企業だったりすると、意思決定は速いことの方が多い。そのことからしても、一般的な...

上位概念化とは何か?(ドリル受検対策③)

イノベーション人材に求められる能力には色々ある。しかし「最低限これだけは共通して必要だ」というものは少ない。「我事化」や「知的好奇心」などといったところだと考えられる。しかし、それ以外では、「あればあるほどいい」し、「なければ始まらない」というわけでもない。 イノベーション人材に求められる能力というと、「創造性」「創造力」「クリエイティビティ」といった能力を一番先に思い起こす人が多いようだが、重要であることは間違いないが、唯一絶対の一番重要項目かというと、そうとは限らない。 私達は創造性のような能力を「(イノベーション人材に求められる)知的能力」に分類しているが、その一方で「(イノベーション人材に求められる)人間力」というカテゴリーもある。どちらの方が重要と言うことは難しいが、人間力が必要条件で、知的能力が十分条件のようなものだと考えられる。つまり、人間力は「なくてはならないもの」に近いが、それだけでイノベーションが起こせるわけではなく、その上に知的能力があって初めて実現できる可能性が出てくるわけだが、だからと言って保証されているわけでもない。人材育成やアセスメントに携わる者として、これほど難しいものはない。「難しい」と書いて「おもしろい」と読むのだが。 さて、そうした知的能力の中で重要なものの1つが「上位概念化」である。知財分野ではよく使われる用語でそこから転用したものであるが、意味は多少なりとも違う。上位概念化は知的能力の中でもとても難度が高く、これができる人というのはたくさんいるわけではない。少なくとも日常生活や一般的な職業の通常業務ではなかなか育ちにくい。 それでも重要なのは、特に「イノベーション・プロデューサー」の役割に特にこの能力が求められるからだ。(『 イノベーション創出の最重要人物:「イノベーション・プロデューサー」 』参照) 上位概念化とは、認識した具体的事象から抽象化し、上位概念を取り出すことである。上位概念とは、本質、構造、真の目的、共通性などのことで、どれも表面に現れて来ない。だから認識しづらいし、疑おうとも思わない。 例えば、テニスというスポーツにおいて、目に見えやすいのは試合結果や、ゲーム中の選手の動き方、表情などといったところだろうか。そうした段階を、一段上位概念化すると...

イノベーションを阻害する切迫マネジメント

イノベーション創出のためのマネジメントと、効率的作業組織の維持とそれによる問題解決のためのマネジメントはまるで違う部分がある。シンプルに言えば、前者では、余裕と切迫のバランスを、余裕重視にした方が適しているが、後者では切迫重視にする方が適していると言える。 別の記事『 イノベーションの試みのうち8割がこの「失敗パターン」にはまる~① 』シリーズでは、4回目に『 イノベーション失敗パターン④:【効率的作業組織 vs イノベーション創出組織】 』という記事があり、その2つのタイプの組織の違いについての詳細はご参考にしていただきたいが、チームマネジメントのやり方としては余裕と切迫の振り子が重要で、効率的作業組織なら「普段は切迫、時々余裕」なのかもしれないが、イノベーション創出組織なら「余裕中心、ところどころで切迫に振る」というイメージだ。 余裕重視マネジメントでの切迫とは、例えば、時々「この挑戦で5年後の営業利益10億を目指してるんだったよね?忘れてない?」とリマインドするようなことであり、切迫重視マネジメントでの余裕とは、昔で言えば、時々「ノミュニケーション」でガス抜きをするようなことが一例である。 ただし、現実には、「あなたのチームはイノベーション創出組織、あちらのチームは効率的作業組織」などと明確に分けられていないことの方が圧倒的に多い。効率的作業組織が、その業務の傍らでイノベーション創出を求められていることの方が多いのではないか。 切迫中心のマネジメントとは、極端に言えば、イソップ寓話「北風と太陽」の北風のマネジメントとも言えるかもしれない。 私は他の記事でも何度もこのことを書いているので繰り返し読んだ方には申し訳ないが、この点が気になっている。というのは、近年の日本企業の全体的な傾向として、イノベーションを追求しようという企業は多く見えるものの、切迫中心から余裕中心になりつつあるかというと、むしろその逆だからである。 というのも、1990年代の国内外の経済危機、2008年以降のリーマンショックと、その前後にあったコンプライアンス/ガバナンス重視などを背景に、切迫重視は徐々に強化されてきている。何かネガティブな大事件をきっかけに「社内の統制をより厳しくする」という打ち手は心理的には理解できるが、その弊...

【事例】某製造業企業の研究所に存在していたイノベーション阻害要因

ある製造業企業で、研究所のチームリーダーを対象とした研修が行われた。私はそのファシリテーターとして一部を担当させていただいた。その中では、当社の「イノベーション組織診断」を使った。 「イノベーション組織診断」とは、その名の通り、組織の状態がイノベーションを創出できる状態になっているか、ということを定量的に測定するものである。ただし、短時間で自分で結果も出せるセルフチェック形式もあるので、研修中でも簡単に扱える。 一見矛盾しているように見えるのだが、イノベーションは組織が産み出すということは言えない。つまり、「こういう状態にある組織は高確率でイノベーションを創出する」ということがなかなか言えない。 ただし、こうは言えるのである。「こういう状態にある組織は高確率でイノベーションを創出できない状態にある」ということだ。つまり、イノベーション創出を阻害する要因は共通性が高い。この診断はそれを測っている。 言い換えるなら、組織状態とはイノベーション創出の必要条件であって、十分条件ではない。 したがって、全体的に得点が高ければ、「イノベーションを創出できる条件は揃っている」ということを意味し、得点が低ければ阻害要因を取り除くことが必要となる。それはどれも簡単ではないが、イノベーション創出のためにリーダーシップを取るべき人がまず何をすべきかを考えるヒントになる。 この企業の研究チームリーダー、14名の皆さんはとても面白がって取り組んでくれていた。まず、セルフチェックの様式の質問紙に回答してもらい、それを自ら集計してもらった。質問紙はこのようなものである。(目的などは口頭で説明した。) 「【分野①】」と書いてあるが、分野⑥まであり、合計41問ある。セルフチェック形式ではなく、当社に回答を集めて集計する形なら、このようなレポートが送られてくる。(この研修では出力しなかったが、1名の方の実際の結果を出すとこのようになる。) 全体結果に続いて、6つの分野ごとの結果も表示されているのだが、6つの分野とは以下の通りである。 ”にっちもさっちも” ”恐怖政治” ”大企業病” ”硬直管理” ”依存” ”あくせく業務” それぞれがどういう意味か、なぜそれがイノベーションを阻害するかは別の記事で書きたいと思うが、大企業の場合、「大企業病」が低く(阻害要因として強く)なりやすく、それに続いて「依存」が...

プロダクトアウトな傾聴力、マーケットインな傾聴力

傾聴力の重要性はよく言われることだが、対人対応では全ての基本だと言っていい。 対人対応というのは実に幅広い。仕事上のコミュニケーションでも様々な関係性やシチュエーションがある。タスクをこなし、問題解決を前進させるためのコミュニケーションもあれば、感情に寄り添うためのコミュニケーションもある。上司が部下を励ますためのコミュニケーション、部下の成長を促すコミュニケーション、つまりリーダーシップで求められるコミュニケーションもある。もちろん、コミュニケーションは対人対応の中心ではあるが、それが全てでもない。その中でも、傾聴は全ての基本である。(さらに、別記事『 測定しにくいイノベーション能力、「人望/愛されキャラ」 』ではイノベーション人材にとって傾聴が不可欠であることを語っている。) 私は2003年ぐらいからインタビュー・アセスメントをやっているが、当然のことだが、傾聴力はまず何よりも重要である。その上、単に話を聞けばいいわけではなく、「アセスメント」なので、色々なことを考えながら聞く必要があるが、それでも、相手にとって自然なコミュニケーションになっていることは大事なことである。 しかし、「傾聴が上手い人」というのは、具体的に顔が思い浮かぶほど、数えられるぐらいの人数だ。つまり、非常に限られている。もちろん、話を聞こうとしている人はたくさんいるが、効果的な傾聴ができているかどうかはまた別の話である。 できているかできていないか、あるいはタイトルにあるように「プロダクトアウトかマーケットインか」の二項対立にすると、話を単純化しすぎてしまうものだが、わかりやすさのためにあえてそうしたい。 というのも、「聞いているつもり」になりやすいからだ。全然効果的ではないのに、「傾聴?あー、自分は問題ないっす。」ぐらいの方が多い。他の能力と違って、傾聴力というものは客観的に捉えにくいという特徴がある。 効果的な傾聴ではない話の聞き方には、主に以下のようなパターンがある。客観的に捉えにくいだけに、あなたの傾聴力をチェックするのに役立てていただきたいと思っている。 ◆パターン①「早々に自分の関心のある話題に持って行く」 他者が話し終わっていないのに、自分の話に持って行くというのはよくあることだ。それが良くないことだということを認識している人も多い。日本では「話は最後まで聞きましょう」というこ...

人間の「非」成長性と適材「不」適所

役職はどうあれ、実質的にマネジメントをやっている人々が口をそろえて言う言葉はたくさんあるが、「適材適所」はその1つである。 これも創造性のトレーニングになるが(別記事「 創造性とは、伸ばせる能力なのか? 」参照)、そういう言葉は「もしかしたら、逆も真なのではないか?」と疑ってみると、新たな視点が得られることがある。「適材適所」もその1つである。 つまり、「適材『不』適所」が真である、ということだ。 「適材適所」が間違っていると言っているわけではない。それが原則としてあることに変わりはないだろう。しかし、「本当にそれだけでいいのか?」ということである。 行動科学者であるモーガン・マッコール教授によれば、 人は成長と相反することを好む 、と言う。私が色々な人を見てきた中で、これは的を射ていると思う。 どういうことか? まず、「成長したい」という内容のことを、言葉では言う人は多い。しかし「成長」という言葉が意味していることが「より大きな成果を上げること」であることが多い。これは私とっては非常に意外だったのだが。行動科学や心理学の分野で言う成長とは、様々な定義があるが、「好ましい(とされる)行動を取れるようになること」であり、たまたま1回できることではなく、再現しようと思えばできるようになることを意味している。この2つの「成長」には大きな隔たりがある。真逆である、と言ってもいい。 なぜ真逆なのか? 「より大きな成果を上げること」を目指すことは素晴らしいことだ。しかし、全員ではないが、そういうことを思っている人達のうちの多くが「自分の得意なことをすることで」より大きな成果を上げること「で、さらに認められること」を暗黙のうちに前提としているのである。「得意なことをやって認められたい」…もっと言えば「今、既に持っている自分の能力を使って認められたい」のである。これには行動変容の前提はないか、小さいと考えられる。ただし、もちろん、「自分はまだまだだ」と思っていて、好ましい行動変容をして大きな成果を上げることを目指すという、ハイブリッドの人もいるが、本心から行動変容を望んでいる人はどうやら少ない。 「 『人を育てようとすること』の大きな落とし穴 」でも書いたが、いくら上司が「この部下はこの弱みを克服しなければならない」と思っても、本人が(少なくともすぐには)なかなかその通りに成長して...

イノベーション失敗パターン⑥:【ようこそ、イノベーション創出という冒険の旅へ】

「 イノベーションの試みのうち8割がこの「失敗パターン」にはまる~① 」 「 イノベーション失敗パターン②:【イノベーションの目的のジレンマ】 」 「 イノベーション失敗パターン③:【遠い人】 」 「 イノベーション失敗パターン④:【効率的作業組織 vs イノベーション創出組織】 」 「 イノベーション失敗パターン⑤:【創造性】 」 の続きです。

イノベーション失敗パターン⑤:【創造性】

「 イノベーションの試みのうち8割がこの「失敗パターン」にはまる~① 」 「 イノベーション失敗パターン②:【イノベーションの目的のジレンマ】 」 「 イノベーション失敗パターン③:【遠い人】 」 「 イノベーション失敗パターン④:【効率的作業組織 vs イノベーション創出組織】 」 の続きです。

イノベーション失敗パターン④:【効率的作業組織 vs イノベーション創出組織】

「 イノベーションの試みのうち8割がこの「失敗パターン」にはまる~① 」 「 イノベーション失敗パターン②:【イノベーションの目的のジレンマ】 」 「 イノベーション失敗パターン③:【遠い人】 」 の続きです。

イノベーション失敗パターン③:【遠い人】

「 イノベーションの試みのうち8割がこの「失敗パターン」にはまる~① 」 「 イノベーション失敗パターン②:【イノベーションの目的のジレンマ】 」 の続きです。 前回はこんな投げかけで終わりました。 「技術革新を伴わないイノベーションは、もしかしたら先進的なイノベーションかもしれません。今日的なイノベーションなのかもしれません。ただ、技術革新を伴わない方が優れている明快な理由があります。    ぜひ想像してみてください。何だと思いますか?」  

イノベーション失敗パターン②:【イノベーションの目的のジレンマ】

この記事は、前回に続いて、ある顧客企業の社内メルマガのために私が書いた文章である。まだ1回目をご覧になっていない方はぜひ①を先に読んでいただきたい。 『 イノベーションの試みのうち8割がこの「失敗パターン」にはまる~① 』 というのも、①は「間違い探し」クイズのようになっていて、今回の②以降で間違い部分を解説していく。

イノベーション人材が育つ環境は「辺境」

イノベーション人材とは、何かしら狭い範囲の特徴を持つ、限定的な、似たり寄ったりの人達のことを指しているのではない。 当社がよく使用している当社の能力要素9項目は、共通して持っていることが多い、というだけのもので、高ければ高いほどいいけれども、それがないと始まらないという類いのものではない。イノベーション人材は独自性が強いことが多く、つまり多様である。 多様性がイノベーションを生むという考え方があるが、私の考えでは、それももちろんあるが、多様性を許容、あるいは尊重するような組織は独自性の強い社員が育つ環境を持っているということであり、そうした個人がイノベーションを生む、というメカニズムもあると考えている。 そうした独自性の強い”個”が育つ組織はどのような組織か? 面白いことに、1つの会社の中でも、イノベーション人材が育つ組織と育たない組織が両方あったりもする。あなたの会社はどうだろうか。感覚的に理解できる方も少なくないのではないだろうか。 イノベーション人材が育ちやすい”場所”は様々だが、共通して言えるのは、一言で言えば「辺境」である。辺境という言葉は、中央から遠く離れた地域や国境付近のことを意味する。中央というのは、「本社」や「本社機能の間接部門」という意味もあるかもしれないが、それよりも、1つの会社が複数の事業を持っている時、どうしてもメインストリームとそうでない事業があるものである。そのメインストリームが中央であり、そうでない事業が辺境である。 インフォーマルな言い方の方がぴったり合うのだが、大きな会社になればなるほど、「偉い」とされている部門があるものである。誰も明文化はしていないが、組織の序列のようなものである。往々にして出世コースとも関係が深い。このような、偉くてぴかぴかの部門が中央であり、序列の下の方が辺境である。 また、こういう言い方もできる。会社(またはグループ)全体の売上や利益のうち、大きな比率を稼いでいる本流事業のような事業と、そうではない脇役的な事業がよくある。前者が中央で、後者が辺境と言ってもいい。 こうした辺境の方がイノベーション人材は育ちやすい。もちろん、辺境部署なら必ずイノベーション人材になるわけではないが、イノベーション人材と言える人々を一人ひとりつぶさに見ていくと、そういうところの経験が大きな原点となっている人が非常に多い。 逆に言...

イノベーションの試みのうち8割がこの「失敗パターン」にはまる~①

ある顧客企業では、人事部で社員向けのメルマガを発行している。グループ企業を合わせると何万人も従業員がいる巨大企業である。この企業では、「イノベーション」をキャッチフレーズに掲げていた。 メルマガの担当者の方からのご依頼で、「イノベーションの失敗パターンから学ぶ」と題して寄稿した文章を書いたことがあった。これが私の予想を大きく上回る反響、好反応をいただいたので、一部このために変更して、紹介したい。 その前に。このメルマガは、他の回も読ませていただいたが、1回1回の文字量が非常に多い。私も13ページも書いてしまった…。そんな超長文メルマガを、発行直後から、あんなに大きな反響をいただくほどに沢山の社員の皆さんが読んでくださっていること自体が物凄いことだ。ぜひメルマガのタイトルぐらい紹介したいところだが、社内メルマガなので一応控えておく。 そういうわけで、何回かに分けて連載の形を採りたい。 まず第1回は、イノベーションに関する「間違い探し」のクイズのようなものである。次回以降、その解説が続くが、ぜひそれを読む前に、あなた自身にも考えていただきたいと思っている。 しかも、私が「間違い」だと指定したものは、ひょっとしたら視点を変えれば間違いではないかもしれないし、他にも「間違い」はあるだろう。そういったことに気付いた方がいらっしゃったら、ぜひ「お問い合わせ」の方からコメントをしていただけると嬉しい。

経営の中でも最高難度:「イノベーション事業家」

イノベーション人材には「構想人材」と「実行人材」の2種類があり、前者の構想人材には「イノベーション・プロデューサー」と「イノベーション事業家」の2種類がある。 (参考記事『 イノベーション人材の2タイプ:「構想人材」と「実行人材」 』 『 イノベーション創出の最重要人物:「イノベーション・プロデューサー」 』) イノベーション事業家 ビジネスとして持続可能な、あるいは発展可能な状態を構想し、実現をリードする役割がイノベーション事業家である。現実には、プロデューサーと事業家を同一人物が兼ねているケースも多いと思われる。 これは、例えばグループ会社の経営を経験した人ならできるかと言えば、必ずしもできるとは限らない。じゃあ親会社の経営経験者ならできるかと言えば、それも必ずしもできるとは言えない。イノベーション事業家に求められる能力は、一般的な会社経営者や事業経営者に求められる能力とはまた別物である。 その違いの中で大きいと考えられるのは、リスクに対する姿勢である。一般的経営者はリスクを把握した上で、それを取るか取らないかを判断する。イノベーション事業家は、もちろんそういうケースもあるが、それに加えて、自分でリスクを軽減することが求められる。元々が高リスクのステージなので、そういう行為が重要な意味を持つ。 また、高いリスクを取りたがる人はイノベーション事業家には向いていない。 ただし、こうした話は一般論であり、例外はたくさんあるので一概にそうでなければならない、という言い方はできない。 いずれにしても言えるのは、イノベーション事業家がすべきことは経営の中でもかなり難しいことであり、自分独自の事業創造の方法論を持っているということは言えるかもしれない。独自の方法論を持っているということは、自分の中で戦略・戦術に組み立て方を工夫・試行錯誤して考え、検証してきた経験知がある、ということだろう。 しかしながら付け加えなければならないのは、そんな試行錯誤と検証が、今の日本で許される環境というのが多くあるだろうか。もちろん、多少そんな余裕のある業界トップ企業もあるかもしれないが、そう多くはないかもしれない。いずれにしても、「余裕」がある状況がなければイノベーション人材、特に構想人材は育ちにくい。 また、大企業社員に時々いるが、もし自分が小規模企業の経営をしたら簡単にうまくいく、と考えて...

日本人管理職の最大の弱点、「創造性」

私は約20年、様々な人材の能力アセスメントに関わってきたが、そのほとんどは日本人である。そのうち、新卒採用でない部分で言えば、おそらくその8割以上は日本企業に勤めている方々である。管理職になる手前ぐらいの方が多く、経営層候補、事業部長なども含まれている。多くはインタビュー形式のアセスメントである。 そうした人材に共通する強みや弱みがある。おそらく、アセスメントに直接携わったことがない方からすると驚くほどだろうと思うが、企業によって色がある。ただ、そうした企業によっての特徴も、個人個人の特徴も均した時の強みと弱みである。 強みとしては、バイタリティ系の能力や、ストレス耐性系の能力、情報や状況を把握する能力が共通している。要は、情報を正確に理解して、粘り強く、我慢強く最後までやり切る、という人の姿を思い浮かべてもらえれば、それが日本のホワイトカラーの管理職層の典型像と言える。これに加えて、ここ20年ほどは、統計的な検証はしていないが、徐々に分析力系の能力が高まっているように思う。 共通する弱みは、創造性系の能力と戦略策定系の能力、俯瞰系(ビジョン構築や長期的な計画力など)の能力の3分野である。強みと合わせて典型像を言語化するなら、 「情報を正確に理解して論理的に分析し、粘り強く、我慢強く最後までやり切るが、今までにないやり方、人と違うやり方を自分で考えることが少なく、現場視点ではあるが視点が低い。」 という像になる。 しかし、創造性というものは、測定が難しい。人が人を「創造的だ」と思うのは、人が何らかのアウトプットをしたものを見て初めて言えることだからだ。「この絵はクリエイティブだなぁ」などと。アセスメントが評価するのも、何か構想したアウトプットに、目新しさがどれほど見てとれるか、といったことである。 しかし、創造性というものは、思考プロセスなのである。思考といっても左脳的というよりは右脳的で、直感的である。人の頭の中は、かち割っても見ることができない。 しかも創造性は定義でさえ難しい。定義がなければ測定もできないし、測定方法が限られているのでそれに合わせた定義は意味が薄れたりもする。私は創造性を「自分の知識にないことを考え出す思考プロセス」だと定義しているが、定義や測定方法についてご関心があればぜひ心理学の論文や書籍を探ってみていただきたい。どれだけ難しいかがお分かり...