スキップしてメイン コンテンツに移動

若手社員の昇降格に「ディスタント・アセスメント」を活用した事例


あるクライアントでは、当社サービス「ディスタント・アセスメント」をご活用いただいている。この企業では、管理職の昇降格には集合研修形式(アセスメント・センター方式)のアセスメントが実施されているが、それを経験の浅い層の昇降格判断に用いるには、色々とそぐわない点がある。





まず、何と言っても大きい要因は人数の多さである。経験の浅い社員層の中で、上司から昇降格を推薦された人は毎年100人前後であり、アセスメント・センター方式ではかなりのコストがかかる。また、同方式は2日間のプログラムであることが多いため、参加者が通常の仕事を抜け、交通費をかけて1ヶ所に集まり、宿泊や食事の費用も考慮に入れると、非常に高い実質コストになり得る。

アセスメント・センターがそぐわない点は、それがフォーカスするのが「マネジメント能力」中心である、ということでもある。経験の浅い層にはマネジメントを行っている人もいるし、そうでない人もいる。近い将来に求められていない能力を測ることは、目的からしても公平性からしても、あまり合わない。

後者の理由からインタビュー形式のアセスメントも検討されたそうだ。インタビューなら、マネジメント能力でなくても、コンピテンシーが設定されていれば問題なく能力を測定できる。ただし、1人あたりのコストはアセスメント・センターの半分になるかというと、おそらくそこまで安くはならないだろう。

一番ボトルネックとなるのは、人数の多さから来る、アセッサーの稼働にかかる費用と言える。それを解決するために、「ディスタント・アセスメント」では色々な費用抑制の工夫をしている。

残念ながらその中身を詳細に明かすことはできないが、おそらくアセスメント・センターの参加者1人あたりのコストの1/3以下、実質コストで考えれば控えめに考えても1/4以下ではないかと考えられる。

同時に高いクォリティを保つよう努めている。もちろん、アセッサーの努力の賜物である。ただ、アセッサーにとっても、このアセスメントをすることがとても勉強になり、また、楽しいものでもある。

もちろん、「ディスタント」(遠隔)とある通り、受検者は自宅でもどこでも、つまりどこかに集まらなくても実施できるものでもある。

ただ、「ディスタント・アセスメント」も万能ではない。システム的に処理する検査類などのアセスメントに比べればコストは高いし、精度の担保も簡単ではない。それでも、この企業では、非常にうまく活用してくださっていると思われる。


宮田 丈裕 (当社代表)




※この記事は、引用・リンクは自由にしていただけます。
ただし、当社の会社名、記事の著者名を引用していただくことと、
どのようなサイトなどのメディアで取り上げるかを
当サイトの「お問い合わせ」から当記事タイトルと共にご一報いただくことを
条件とさせていただいております。



このブログの人気の投稿

イノベーション人材の2タイプ:「構想人材」と「実行人材」

イノベーション人材のタイプには、大きく分けると2種類がある。 イノベーション構想人材 イノベーション実行人材 これらは、当社が音頭を取って開催したイノベーション研究会「FURICO」が出した結論の1つである。 「イノベーション人材」という言葉は今でこそよく聞かれるようになったが、多くの場合、構想人材を指しているように見える。つまり、何らかの革新的な事業や商品の開発を発想し、計画するような人である。これについては、別の記事で、もう少し細分化して説明したいと思う。 (『 イノベーション創出の最重要人物:「イノベーション・プロデューサー」 』 『 経営の中でも最高難度:「イノベーション事業家」 』) イノベーションの創出において、実行人材も同様に重要である。構想人材が自分の構想を、自ら実行することはよくある。しかし、それだけだと難しいというケースは極めて多い。したがって、実行人材を巻き込むことが肝となるケースが多い。 イノベーション実行人材とは、単純化して言えば、構想人材が考えた構想に対して、「それ、面白いかもしれない!」と思い、その実現のために自分でも工夫をしながら前進させていく人である。 そのためには「我事化」や「知的好奇心」が大変重要である。こうしたものを持っていて、それによって自分を”点火”できれば、その他の能力は「あればあるほどいい」という位置付けである。こうしたイノベーション実行人材は意外に多くない。構想人材も極めて少ないが、実行人材も少ないのが現状のように見受けられる。 当社の推計だが、イノベーション構想人材は日本の全労働人口の0.05~0.1%程度、実行人材は1~5%程度しかいない。その他はどういう人か。与えられた仕事を真面目にこなし、自分の”個人的”で”勝手な”好奇心から動いたりせず、我慢強く正確に仕事をやり続ける人たちがその中心である。この人たちは「効率的作業組織」においては大事だが、「イノベーション創出組織」においての優先順位は下がる。 つまり、日本は全体的に言えば、「効率的作業組織」でハイパフォーマンスを発揮する人たちを育ててきた。今もそれは変わらない。それが悪いわけでもないが、それは「イノベーション創出組織」でのハイパフォーマーの姿とはかなり違い、そういう人たちを育ててきていない。もっと正確に言えば、そういう人たちが育つ環境を用意していないケース...

ビジネス着眼とは伸ばせる能力なのか?(ドリル受検対策⑥)

 結論から先に言えば、「ビジネス着眼」という能力項目も、十分に訓練可能なものである。決して先天的なものでもなく、伸ばせない能力でもなく、ビジネスの経験がなくても伸ばせるものである。 とはいえ、もちろん、ほぼ先天的にビジネス感覚の鋭い人はいるし、逆に、ビジネスに興味のない人だっている。なので、程度の差はあるが、それを伸ばしたいと思って効果のある方法を採っていれば訓練して伸ばすことはできる。 この「ビジネス着眼」という能力は、ノウハウやスキルとは別の次元のものである。近年はビジネス的なノウハウを提供している動画や文章が非常に増えている。集客方法、マーケティング方法、売上を伸ばす方法などといった、小規模ビジネス向けのノウハウから、効率的な仕事の進め方、コミュニケーション方法など、もっと一般的なノウハウや専門分野のノウハウまで、あらゆるノウハウに溢れている。 そういうもののうち、あなたが興味をもったノウハウを学ぶことを止めはしないが、それだけでは「ビジネス着眼」は伸びない。その学びをあなた自身の仕事の実践にどう活かすか、どこをどう変えるか、どこがうまくいってどこがうまくいかないか、うまくいかないところをどう解決するか…こうしたことを考えることで「ビジネス着眼」が伸びる可能性が出てくる。 つまり、ビジネス・ノウハウは、あたかもそれが唯一の正解であるかのように提示されることが多いが、それは必ずしも真実ではない。唯一の正解などこの世には存在せず、一瞬存在したとしても常に変化する。実際、たった5年前に提供されていたwebマーケティングのノウハウは、今でも全て有効かと言うと、そうではない。 むしろ、「唯一の正解などこの世には存在せず、一瞬存在したとしても常に変化する」ということを前提としないと、「ビジネス着眼」の能力は伸びないだろう。そこが出発点である。ちなみに、ビジネス・ノウハウがメディアに溢れていることは、ビジネス着眼、ビジネス感覚、ビジネス視点を作る上で邪魔になると私は考えている。なぜなら、独立・起業しようという人が、当たり前のように”正解”を求め、それに忠実にやることがビジネス上の成功の秘訣であると大いなる勘違いをするからだ。それはその人の成功の秘訣ではなく、ノウハウ提供者の成功の秘訣でしかない。(だからこそ、あたかもそれが唯一の正解だと思わせるような表現をしているケ...

社員の顧客視点の劣化は会社にとって命取り

これを書いている今のつい数時間前の話だが、日本の某新聞社が、自社の電子版の広告キャンペーンをやっているのを目にした。そこでは、その新聞電子版のサブスクリプションを止めると「ビジネス実践力がつかない。つけるためには継続が大事。」というような内容を訴求していた。 私は甚だ疑問なのだが、これは何か証拠でもあるのだろうか。継続した人のグループと継続しなかった人のグループで、その人たちのビフォーとアフターとの差に有意な差があったとでも言うのだろうか。百歩譲って差があったというなら、本当にどんな職種においてもその差があると言えるものなのだろうか。 私がこう反論するのは、確信に近いものがあるからだ。まず関係ない。論理的に考えれば関係あるはずがない。「ビジネス実践力」をどう定義するかにもよるが、わざわざ「実践力」を切り取っているのだから、思考面は含めないと考える方が自然である。そうだとすると、人を動かしたり心を動かしたりする感受性を含めたコミュニケーション面や、他者と信頼関係を構築するところや、信頼関係を構築する過程でのパーソナリティの面、あるいは専門的なテクニカルスキルの面が主に関連してくる。新聞の電子版を読み続けると、コミュニケーション能力やパーソナリティやテクニカルスキルなどが上がるのだろうか。そうだとしたらその合理的な理由は一体何なのか。 二百歩譲って、「ビジネス実践力」には思考面やその前提知識も含まれているとしよう。そうだとすると、例えば私が関わらせていただくことの多い「経営視点」を養成するのに新聞を使うことはできる。簡単に言えば、「自分がその記事の当事者の立場だったとしたら、何を感じ、何を考え、どう解決しようとするか」を想像し、できるだけ多くの状況設定や選択肢を想定することで擬似経験の幅や当事者意識の強さを広げたり高めたりすることができるからだ。しかし、「新聞(の電子版)を読んでさえいれば自動的にビジネス実践力(なるもの)が伸びる」わけではない。そういう意図を持って読む必要があるからだ。 いや、広告では「自動的に伸びる」とは言っていない。私がわざわざこんな文章を書いてまでこの広告を問題視しなければならないと考えたのはそこに関係している。「サブスクリプションを止めると伸びなくなる」というような表現をすることで、少し大げさに言えば「脅し」ているわりに「自動的に伸びる」ことは...