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『人を育てようとすること』の大きな落とし穴


一般的に「人材育成」というものは非常によく語られる。後進の人を育て、組織や技術や社会がそれによって維持され、発展していくことは言うまでもなく素晴らしいことである。

しかしながら、私自身が、とてもありがたいことに非常に多くの人の成長のために仕事をしてきたこともあって、こんな風に考えている。人材育成はそもそもとても難しいものだし、それどころか「不可能」だと考えた方がいい。もちろん、人には急成長するようなことがある。しかしそれは本人が成長したのであって、上司や先生や親が育成したからでは(少なくとも直接的には)ない。





「育成しよう」とすると色々と落とし穴がある。非常に多いのは、自分が経験してきたことを相手に押し付けることである。私の友人が親(多くは父親)としてお子さんに、自分がやっていたスポーツ競技や趣味をやらせたり、通っていた学校に入学させようとしたり、ということも多いのだが、私はこういうことに大反対である。何を考えているのか、と思う。

全員ではないと願うが、多くのお子さんは本当に気の毒である。親からの「期待」という名のエゴを強制的に受けさせられ、「育成」という名のもとにお子さん本人の自由を奪い、経験のチャンスの幅を狭めてしまう。もちろん、それが結果的に良い結果を産むことは十分にあり得る。しかし、それは本人が自分自身を納得させ、成長を目指したからであって、その環境を与えた親のお陰では決してない。そもそも、本人が自分で好きなことやものを見つけ、それを自分から言い出し、そこで夢中になって成長を目指すことの大事なプロセスを親のエゴが奪っている。

これはあくまで一例でしかないが、「育てよう」とする側の人は要注意なのである。「育てる」というのは、あくまで「成長の手助け」であって、主人公はあくまで本人である。育てる側の人が主体となって、意図した人間を作ろうとすることは、場合によってはできることもあるが、それは先ほどの例と同じで、本人が本気で成長しようと志して努力した結果でしかない。誰かを「育てよう」とした経験がある方なら多少なりともご理解いただける部分があるかと想像するが、他人(当然、血のつながった子供も含む)は自分が意図した通りには変化してくれないことの方が圧倒的に多いものである。

親だけの話でもない。私がコーチとしてお会いした新任管理職(着任後、半年~1年ぐらい)の8~9割は、「部下が思った通り育ってくれない」という悩みを持っていた。私は一人一人にこういうことを伝えている。「あなた自身が成長してきた過程を思い起こしてください。あなたは『上司が思った通りに成長しよう』と思って成長しましたか?違うはずです。あなた自身が『こういう能力が自分には必要だ』と思ったから努力してそれを成し遂げたはずです。どう成長したいかを決めるのは本人でしかありません。『上司の意図通りに育てられる』という暗黙の前提が全くの間違いなんです。」これをお話すると、おそらく半分以上の新任マネジャーの方々からは、すぐに変化が見え始める。

その「意図」は自分のエゴだと気付くことからしか、真の意味での育成は始まらない。


宮田 丈裕 (当社代表)



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