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イノベーション人材を考えるなら、まず自分がイノベティブであれ


正直に表明しておくと、時々、人事のご担当者の行為がいやになることがある。どういう時かというと、「自社の社員のダメ出しばかりする評論家」になっておられる時である。





人間の能力というものは、必ずコインの裏表のように強い部分と弱い部分がセットになっている。もちろん、総合した時に誰もが同じレベルにあるということはない。しかし、能力が低いからといって、なぜか人間性まで否定するような発言をしているケースを見かける。中には社外にまで矛先を向ける。

私はそういう時も我慢して、うまく合わせて仕事を完遂させようと思っていた。もちろん、プロジェクトが始まる前にはそうしたスタンスが見抜けず、後から分かるケースもあり、それは仕方ない。だが、根本的な尊重が最初から欠けていると分かったら、仕事をお断りしている。あるいは二度とお受けしない(変化が見られない限り)。それは当社のスタンスとは違うからだ。

ただし、そうなってしまうのも分かる。それだけよく見えているということでもあるし、見える立場でもあるということだ。問題意識の強さでもある。しかし、それをやっていると、その方自身の成長は見込めない。「じゃあ、自分はどうなんですか?そんなに他者へのリスペクトがないことをどう考えるんですか?」という話だ。


同様に、「イノベーション」に関しても、イノベーション人材について理解が深まってくるにつれ、「なぜ自社社員がイノベーション人材ではないのか」と憤慨や失望をされているケースもある。問題意識としてはよくわかる。しかし、「では、あなたはイノベーションを起こそうとしているのか?イノベーション人材であろうとしているのか?」というと、その問題はどこか遠くにそっと置かれていることがある。自分は勉強が嫌いなのに、子供には「勉強しろ」と押し付ける親のようだ。

私が非常に重要だと思っているのはこのことだ。もし、社員にイノベーションを起こしてほしいのなら、その前か同時に、自分がイノベーションを起こそうとするべきだ。

私も同じだ。イノベーション人材・組織の発掘・促進をするなら、自分でイノベーションを起こすべきだ。実は、「ドリル・アセスメント」はそうして作ったものである。それがイノベーションかどうかは別にして、そうした試みを常にしていたいと思ったからである。

もし、イノベーション人材が自社の課題になっているという方がこれをご覧になっていたら、やはり同じことを申し上げたい。「まず自分がイノベティブであれ」と。そうでなければ”子供”は育たない。

伝統芸能の世界でもよく言われることだ。伝承も大事だが、革新もセットで伝統芸能の伝承なのだと。あなたが大企業に属しているなら、おそらく間違いなく、その会社には過去にイノベーションがあったはずだ。それも1つや2つではないかもしれない。それを自分が実践して背中を見せることで、他社員に伝承していただきたいと願う。

ただ、イノベティブであろうとしている人がいることにも驚かされる。当社はイノベーションをやろうと試みているが、それをどう使うかによって革新度合いは何倍、何十倍にもなる。事例について書いた記事を見ていただければ、そうした例が十分まだまだあり得ることが分かっていただけると思う。

自分は安全圏にいてリスクを取らず、人にはダメ出しやイノベーション要求をすることは、あまり高い価値を産み出しにくいだろう。

私は、社員をリスペクトし、自分自身がイノベティブであろうという方に対しては、一緒にイノベティブな仕事を創っていきたいと思っている。何としてでもイノベーションを創出する支援をしたいと思っている。それが当社の使命だと思っている。


宮田 丈裕 (当社代表)




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